レポート‎ > ‎

GerBI2015

ドイツバイオイメージング年会 2015

ガジェットの仕様の URL が見つかりませんでした

German Bioimaging Annual Meeting 2015

自然科学機構
基礎生物学研究所
EMBLハイデルベルク

三浦耕太 miura@embl.de

German Bioimaging(GerBI)は、ドイツの大学・研究所に所属するイメージングの専門家、特にイメージングファシリティのスタッフを中心とするネットワークである。バイオイメージング関連の情報の共有を目的としており、2010年に発足した。コンスタンツ大学のエリザ・メイ、フライブルク大学のローランド・ニチュケが中心となって運営しており、DFGによる財政的な支援を受けながら、事務局には専属のスタッフがプロジェクト・マネジャーとして勤務している。目下、ドイツ国内の研究機関に属する59のグループが登録しており、ドイツのほぼ全てのイメージング・ファシリティを網羅している。

もともとはEuroBioimagingに国レベルで対応するためのネットワークとして発足したのだが、ドイツの連邦教育研究省がEurobioimagingへの加入を取りやめたため、元々の第一目的は失われている。とはいえ、多くのメンバーを擁するイメージングファシリティのネットワークとして、欧州において大きな存在感を持ち、またドイツの科学技術政策に対して現場からの提言を用意したり行う場として機能している。

年会はドイツのフルダ(Fulda)というフランクフルトから北東に100キロメートル離れた街で過去3回行われており、今回も同じ場所であった。特に大きな大学があるわけでもない小さな街で行われる理由は、フルダがドイツのどまんなかにあり、ドイツの各地からの移動に要する平均時間がもっとも短い場所だから、なのだそうである。

2015年年会は7月6日から8日まで行われ、私は7日から8日まで参加した。今回の参加が私は初めてだったのだが、意外だったのはイメージングに関する技術的な情報の共有よりも、イメージングのインフラに関する現場のニーズや要望を国の科学研究政策に反映させよう、というロビーイング活動に重きが置かれていることであり、そのためのセッションが多いことだった。例えば、スタッフあたり何台の顕微鏡の管理を行っているか、というサーベイを会合の間に行い一般的な基準を探る、という試みが行われていたが、これはそうした基準を数値で出すことにより、人員の足りていない大学ないしは研究所で、あらたに人材を獲得する際にサポーティング・エビデンスになる、ということである。

セッションではEuroBioimaging(EuBI)に関する話題が多かった。EuBIへの参加には国レベルでの合意が必要となるが、誰もが驚いたことにドイツは参加を見合わせた。その参加形態は陪席(オブザーバー)のみ、となっている。この政治的な判断はドイツ連邦教育研究省(BMBF)によってなされたが、その背景や今後どうすべきか、ということを会合に参加していたDFGのA. Tieftrunk氏が説明した。氏はドイツがEuBIに参加することに積極的であり、BMBFにも働きかけたのだがうまくいかななっかこと、特に、Eurobioimagingに参加することで、ドイツが拠出金がドイツの研究者ではなく、他の国の研究者に対して使われることになってしまう、という懸念がBMBFでは大きかった、とのことである。確かに、ドイツは欧州におけるイメージングの中心地でもあり、インフラの共有と人材の流動化を行った結果、ドイツが欧州全体のイメージングを支えるということになれば、実質的にドイツ人の払っている税金が欧州全体に拡散してしまう、という結果もあるかもしれない。一方、コア・ファシリティそのものに対する投資はDFGは今後も拡大していく、とのことであり、国内向けのこの投資に関してはBMBFは全面的にサポートする、とのことである。Tieftrunk氏はコア・ファシリティのメリット等に関して詳しく調査しているらしく、この点に関してもう少し詳しい話を今後聞いてみるつもりである。

他に、今回特に焦点があたっていたのは、生物画像解析に関する財政的サポートの問題のセッションであった。画像解析関連ソフトウェアの開発責任者として、フライブルク大学のオラフ・ローネンベルガー(機械学習を中心とするアルゴリズムの生物画像向けの実装)、マックスプランク細胞発生生物学研究所のパベル・トマンカク(Fijiを立ち上げたメンバーの1人で、PIの立場から自らのラボの計算科学者の活動をサポートしてきた)、ハイデルベルク大学のウルリッヒ・コエーテ(ジェネリックな画像処理ライブラリVigraの筆頭開発者であり、機械学習による生物画像分節化の一般向けオープンソースツールiLastikの開発を主導している)が、オープンソース・ソフトウェアの開発における財政サポートに関しての問題点をそれぞれ述べた。集約すると、開発そのものは計算機科学の方面から潤沢な予算を獲得することができるが、開発を終えた後のメインテナンス、およびユーザーサポートの予算枠がなく、ここでとても苦労する、ということだった。また、私はアルゴリズムの開発や実装だけではなく、その応用、すなわち生物学の問題に当てはめた時に最も問題になる画像データの計測という面のサポートに関して欧州全体のみならず、日本や米国が共通して抱えている課題とその財政的なサポートに関して説明した。イメージングを使う生物学研究において最も困難なのは実験や顕微鏡法ではなく画像解析である、と生物学研究者の7割近くが答えた最近のアンケートの結果や、そのための専門家が少しづつ育っているにもかかわらず、ポジションや生物学のコミュニティにおける立ち位置が圧倒的に不安定である、ということ、その専門家の集まりもサポートする予算枠が存在しないことなど、今後この新しい分野の活動と人材にも目を向ける必要性を説明した。また、私が提起した問題は、開発とその結果の継続性の問題ともオーバーラップしていることを他の参加者とともに確認した。

Comments